流行性角結膜炎(EKC)
① 流行性角結膜炎とは
流行性角結膜炎とは、アデノウイルスD種(8型、19型、37型、53型、54型、56型、64型、85型などの血清型に分かれます)によって引き起こされる目の感染症です。
流行性角結膜炎は、他のアデノウイルス感染症(咽頭結膜熱)と違い、目に特に強い炎症を起こします。
② 症状
角膜、結膜に強い炎症を起こすため、充血、眼脂、瞼の腫れ、まぶしさ、視力低下などが生じます。両目に症状を起こすことが多いです。一般的に、細菌性結膜炎よりも症状は重くなります。臨床症状は、発症後5~8日頃に最も強くなり、通常は発症後約2週間~3週間で充血、眼脂などの症状が軽快します。
③ 原因
発症した他の方から感染します。涙、眼脂に多くのウイルスが存在し、手指を介した感染が最も多いです。
約7日間の潜伏期を経て発症します。
非常に感染力が強いため、周囲の方に容易にうつしてしまうことがあります。(潜伏期間内であれば、その時点で結膜からウイルスは検出されないため、他の方への感染力はないとされています。)
④ 治療
現在のところ、特異的な抗ウイルス薬はありませんので、対症療法が中心となります。細菌の混合感染の可能性があるため、通常は抗菌点眼薬を行います。また、初期から強い炎症を認める場合は、偽膜形成や糸状角膜炎、角膜上皮欠損を合併する可能性があるため、ステロイド薬点眼も合わせて行います。
結膜炎が治った後に、多発性角膜上皮下浸潤(ウイルス抗原に対する角膜の免疫反応によって、角膜が濁ってしまい、まぶしさや視力低下を起こします)が起こることがあります。その場合、しばらくの間ステロイド薬点眼が必要になります。
保険適応外になりますが、『サンヨード』というヨウ素系の殺菌消毒点眼薬を使用することも可能です。ヨード製剤とステロイド薬の併用点眼がウイルス量低下と自覚症状の改善に有効であるとの報告があります。また、多発性角膜上皮下浸潤を有意に抑制することができます。
⑤生活上の注意
感染性は血清中和抗体価が上昇する発症10日頃までと考えられるため、発症後7日間~10日間は、周囲の方に感染させないように注意する必要があります。
家庭内、職場内、病院内での感染拡大を防ぐために、涙、眼脂等分泌物の取り扱いと処分方法に注意し、手洗いをきちんと行ってください。また、タオルを共用しないようにしてください。アルコール消毒は、80%以上の高濃度で10分以上作用させないと効果がないため、水道水による手洗いが重要です。
学生の方へ(小学生、中学生、高校生、大学生)
学校保健安全法により、伝染のおそれがなくなるまで登校は禁止されています。
(発症後7日間~10日間は、他の方に感染する可能性があります。)
コンタクトレンズを装用している場合は、治癒するまでは使用を中止してください。
社会人の方へ
法律で出勤は制限されていませんが、発症後7日間~10日間は、他の方に感染する可能性があるため、自宅安静が望ましいと考えます。
コンタクトレンズを装用している場合は、治癒するまでは使用を中止してください。