霰粒腫
霰粒腫の症状
霰粒腫の最も大きな特徴は、まぶたにできる痛みのないしこりです。最初は小さなしこりとして現れますが、時間の経過とともに徐々に大きくなることがあります。このしこりは、上まぶたにも下まぶたにもできる可能性があり、片目だけでなく両目に同時に現れるケースも珍しくありません。
主な自覚症状
- まぶたの中にコロコロとした硬いしこりを感じる
- 痛みはないが、まぶたが腫れているように見える
- まぶたが重たい感じがする
- 大きくなったしこりによって目が圧迫され、視界がかすむ
初期段階では自覚症状が少ないため、鏡を見て気づくことや、洗顔時に違和感を覚えて受診される患者さんが多いのが特徴です。痛みを伴わないからと放置してしまうこともありますが、大きくなると見た目の問題だけでなく、眼球を圧迫して乱視の原因になることもあるため、早めの受診をお勧めしています。
急性炎症が起こる場合
本来、霰粒腫は痛みを伴わないものですが、しこりの部分に細菌感染が加わることがあります。これを「急性霰粒腫」と呼び、この場合は赤みや痛みを伴うようになります。見た目には麦粒腫(一般的なものもらい)と区別がつきにくくなるため、医師による適切な診断が必要です。痛みが現れた場合は、炎症を抑えるための処置を優先して行います。
霰粒腫の原因
霰粒腫の直接的な原因は、まぶたの縁にあるマイボーム腺と呼ばれる脂を出す腺が詰まることにあります。私たちのまぶたには、涙の蒸発を防ぐための脂を分泌する穴が並んでいますが、何らかの理由でこの出口が塞がってしまうと、行き場を失った分泌物が腺の中に溜まっていきます。
脂質の漏出と炎症反応
マイボーム腺の中に溜まった脂質や、細菌の酵素によって分解された成分が、腺の壁を突き破って周囲の組織に漏れ出すことがあります。すると、私たちの体はこれを「異物」と判断し、排除しようとする免疫反応が起こります。これが肉芽腫性炎症(にくげしゅせいえんしょう)と呼ばれる反応で、周囲に組織が集まって硬いしこりを形成します。
霰粒腫になりやすい要因
霰粒腫が発生する背景には、体質や生活習慣、他の目の病気が関係していることが考えられます。以下のような状態がある方は、再発を繰り返しやすい傾向にあります。
- マイボーム腺機能不全(脂の分泌がうまくいかない状態)
- 慢性的な眼瞼炎(まぶたの縁の炎症)
- 脂漏性皮膚炎や酒さ(しゅさ)などの皮膚疾患
- 不規則な生活やストレスによる皮脂バランスの乱れ
霰粒腫の病気の種類
一口に霰粒腫といっても、その経過や状態によっていくつかのタイプに分けられます。それぞれの状態を見極めることが、最適な治療法を選択するための第一歩となります。
慢性霰粒腫
典型的な霰粒腫で、痛みはなく、数週間から数ヶ月かけてゆっくりと成長するタイプです。組織の中では、脂質を包み込むように肉芽(にくげ)と呼ばれる組織が作られており、薬だけではなかなか小さくならないこともあります。この場合は、注射や手術が検討されることが多くなります。
急性霰粒腫
霰粒腫に細菌感染が合併し、急激に赤く腫れ上がり、痛みを伴うようになった状態です。まずは抗菌薬や抗炎症薬を用いて炎症を鎮めることが優先されます。炎症が引いた後に、芯となるしこりが残ることも多いため、その後の経過観察が重要です。
再発性・多発性霰粒腫
一度治っても同じ場所や別の場所に繰り返しできるタイプです。背景に重度のマイボーム腺機能不全がある場合や、ごく稀に高齢の方では腫瘍(悪いできもの)が隠れている可能性もあるため、注意深い診察が必要です。何度も繰り返す場合は、組織の一部を詳しく調べる検査(生検)をお勧めすることもあります。
霰粒腫の治療法
当院では、患者さんの生活スタイルやしこりの大きさに合わせて、複数の治療法から最適なものを選択していきます。基本的には負担の少ない方法から検討しますが、早期解決を希望される場合は外科的な処置も可能です。
保存的治療と薬物療法
初期の霰粒腫や、サイズが小さい場合には、まずはお薬と家庭でのケアで経過を見ます。これだけで約半数近くの方は改善が見込まれるといわれています。当院では以下の指導を行っています。
- 温湿布(ホットアイマスク):まぶたを温めることで、詰まった脂を溶かしやすくします。1日数回、10分程度温めるのが目安です。
- まぶたのマッサージと洗浄:優しくまぶたの縁をケアし、脂の排出を促します。
- 点眼薬・眼軟膏:ステロイド薬を使用して炎症を抑えます。
- 抗菌薬の服用:炎症が強い場合や、背景に皮膚疾患がある場合に検討します。
切開掻爬術(手術)
しこりが大きい場合や、注射でも治りきらない場合、または早期に治したい場合には、手術によって中の内容物を取り出します。当院では、局所麻酔を用いた日帰り手術を行っています。まぶたの裏側から切開することが多いため、表面に傷跡が残る心配はほとんどありません。処置時間は10分から15分程度です。
費用
霰粒腫の診察、検査、および治療は原則として保険診療となります。以下は窓口でお支払いいただく費用の目安(3割負担の場合)です。初診料や再診料、お薬の処方箋料などが別途かかります。
| 項目 | 費用の目安(3割負担) | 備考 |
|---|---|---|
| 診察・検査 | 約1,000円 - 2,000円 | 初診時の基本費用 |
| 霰粒腫切除術(手術) | 約3,000円 - 5,000円 | 片目の場合。病理検査を行う場合は別途費用がかかります |
霰粒腫についてのよくある質問
Q1. 子供に霰粒腫ができてしまいましたが、手術が必要ですか?
A1. お子さんの場合、まずは温湿布や点眼薬での治療を優先します。しこりが大きく、視力の発達に影響が出る可能性がある場合に限り、手術を検討することがあります。暴れてしまうと危険なため、年齢や状況によっては専門の施設(全身麻酔が可能な病院など)をご紹介する場合もあります。まずは当院で慎重に経過を診させていただきます。
Q2. 放置しておけば自然に治ることはありますか?
A2. 小さなものであれば、数ヶ月かけて自然に吸収されることもあります。しかし、大きくなってしまったものや、組織が硬くなってしまったものは自然治癒が難しいケースが多いです。放置すると「化膿性肉芽腫」という赤いキノコのような組織が飛び出してくることもあるため、早めのケアをお勧めします。
Q3. 手術をした後、すぐに仕事や家事はできますか?
A3. 手術当日はまぶたを保護するために眼帯をしていただくことがありますが、翌日からは通常の生活に戻れることがほとんどです。ただし、数日間はまぶたが腫れたり、内出血で青くなったりすることがあります。激しい運動や入浴(長湯)は当日は控えていただきます。
Q4. 何度も同じ場所にできるのですが、癌(がん)の心配はありませんか?
A4. 一般的な霰粒腫は良性の病気ですが、特にご高齢の方で何度も同じ場所に再発する場合や、形がいびつな場合は「脂腺癌(しせんがん)」という悪性腫瘍との見分けが必要になることがあります。その場合は、切除した組織を顕微鏡で調べる病理検査を行い、詳しく診断いたします。心配な場合は放置せず、ぜひ受診してください。
