ぶどう膜炎
概要
ぶどう膜炎とは、眼球の中にある「ぶどう膜」という組織に炎症が起こる病気です。ぶどう膜は血管が非常に豊富で、目に栄養を届ける重要な役割を担っていますが、その分、炎症が起こると目に深刻なダメージを与えやすく、放置すると視力の低下や失明につながる恐れもあります。
ぶどう膜炎の症状
ぶどう膜炎の症状は、炎症が起こっている場所や原因によって多岐にわたります。初期段階では軽い違和感として見過ごされることもありますが、進行すると日常生活に支障をきたすような症状が現れます。
主な自覚症状
- 目が充血する
- 眼痛(目の痛み)を感じる
- まぶしさを強く感じる(羞明)
- 視界がかすんで見える(霧視)
- 視力が急激に低下する
- 小さなゴミのようなものが飛んで見える
症状の現れ方の特徴
ぶどう膜炎の症状は、片方の目だけに現れることもあれば、両方の目に同時に現れることもあります。また、急激に症状が悪化する急性型と、数ヶ月以上にわたって症状が良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性型があります。早期発見と適切な継続治療が、視機能を守るための鍵となります。
ぶどう膜炎の原因
ぶどう膜炎の原因は非常に複雑で、全身の病気と関連していることも珍しくありません。大きく分けると、免疫の異常によるもの、細菌やウイルスによる感染性のもの、そして原因が特定できないものに分類されます。
免疫の異常(非感染性)
本来、体を守るはずの免疫システムが自分自身の組織を攻撃してしまう「自己免疫疾患」が原因となるケースです。日本では、以下の3つの病気が「三大ぶどう膜炎」と呼ばれています。
1.サルコイドーシス
全身の臓器に肉芽腫(にくげしゅ)と呼ばれる結節ができる病気です。目以外にも肺や皮膚、心臓などに症状が出ることがあります。
2.原田病( Vogt-小柳-原田病)
自分自身のメラニン細胞を攻撃してしまう病気です。目だけでなく、髄膜炎による頭痛や、難聴、めまい、白髪などを伴うことがあります。
3.ベーチェット病
目、口内炎、皮膚症状、外陰部潰瘍の4つを主な症状とする全身性の炎症疾患です。目の炎症が激しく、視力への影響が強いことが特徴です。
感染症によるもの
外部から侵入した細菌、ウイルス、寄生虫などが原因で炎症が起こります。帯状疱疹や単純ヘルペスウイルス、梅毒、結核、トキソプラズマなどが代表的です。免疫力が低下しているときに発症しやすい傾向があります。
その他の原因
目の怪我(外傷)や手術のあとに炎症が起こることもあります。また、喫煙はぶどう膜炎の発症リスクや重症化のリスクを高めるリスク因子であることが知られています。原因を特定するために、当院では詳細な問診と血液検査などを組み合わせて診断を行います。
ぶどう膜炎の病気の種類
ぶどう膜炎は、炎症が起こっている場所(解剖学的な部位)によって、大きく4つのタイプに分類されます。どこに炎症があるかによって、治療方針や経過が変わってきます。
前部ぶどう膜炎
虹彩(こうさい)や毛様体(もうようたい)など、目の中の前方に炎症が起こるタイプです。充血や痛み、まぶしさを強く感じることが多く、比較的診断がつきやすい種類です。
中間部ぶどう膜炎
目の中央付近にある硝子体(しょうしたい)の周辺に炎症が起こります。自覚症状としては、飛蚊症(ひぶんしょう)や視界のかすみが中心となります。
後部ぶどう膜炎
目の奥にある網膜(もうまく)や脈絡膜(みゃくらくまく)に炎症が起こるタイプです。視力の中心を担う黄斑部に影響が出やすく、視力低下やゆがんで見えるといった症状が現れます。
全ぶどう膜炎
目の前方から奥まで、全体に炎症が広がっている状態です。症状が重くなりやすく、視機能への影響も大きいため、迅速で強力な治療が必要となります。
ぶどう膜炎の治療法
ぶどう膜炎の治療の目的は、炎症を速やかに抑えて目の組織へのダメージを最小限にし、合併症を防ぐことです。原因が感染症の場合は除菌治療を行い、免疫異常の場合は炎症を抑える薬物療法が主体となります。
点眼薬による治療
最も一般的な治療法は、ステロイド薬の点眼です。炎症の強さに応じて点眼回数を調整します。また、虹彩が周囲と癒着するのを防ぎ、痛みを和らげるために、瞳孔を広げる「散瞳薬(さんどうやく)」を使用することもあります。
注射による治療
点眼薬だけでは炎症が十分に治まらない場合や、目の奥の腫れ(黄斑浮腫)が強い場合には、目の周りや目の中に直接薬を注射することがあります。当院では、患者さんの負担を軽減しつつ、確かな効果が期待できる注射治療を積極的に取り入れています。
内服薬・全身療法
重症の場合や、全身疾患が原因となっている場合には、ステロイド薬の内服や免疫抑制剤を使用することがあります。この場合、副作用のチェックが必要になるため、内科やリウマチ科の医師と連携して治療を進めていきます。
合併症に対する手術
炎症が長引くと、二次的に白内障や緑内障が引き起こされることがあります。薬物療法で改善が難しい場合は、手術を検討します。当院では日帰り白内障手術などにも対応しており、ぶどう膜炎に伴う目のトラブルを総合的にケアいたします。
ぶどう膜炎についてのよくある質問
Q1.一度治れば、もう再発することはありませんか?
A1.原因によりますが、免疫の異常が関わっているタイプは、炎症が落ち着く寛解状態になっても、体調不良やストレスなどをきっかけに再発することがあります。自覚症状がなくても定期的な通院が非常に重要です。
Q2.仕事や運動などの日常生活に制限はありますか?
A2.炎症が強い時期は、目を酷使したり激しい運動をしたりするのは控えてください。症状が落ち着けば通常の生活に戻れることが多いですが、散瞳薬を使用している間は眩しくなり、車の運転などが危険な場合があります。
Q3.ぶどう膜炎は失明する病気なのですか?
A3.適切に治療を受けずに放置すると、重い合併症を引き起こして失明に至る可能性は否定できません。しかし、早期に発見し、根気強く治療を続けることで、視力を維持できるケースがほとんどですので、諦めずに受診してください。
Q4.子供もぶどう膜炎になりますか?
A4.はい。お子様の場合、自分から症状を訴えることが難しいため、発見が遅れがちです。目が赤い、テレビを近くで見る、光をひどく嫌がるといった様子があれば、一度検査を受けることをおすすめします。
